松本です。
インサイトについてあらためてまとめておきます。
なぜならインサイトということばを聞いたことがあっても、
インサイトが腹に落ちていない方が多々いらっしゃるからです。
インサイトは直訳すると洞察、直感などです。
広告やマーケティングの世界では、ここを押すと買ってしまう
生活者の購買のツボのように扱われます。
またインサイトは”インサイトの発見”として
隠れているものを見つけだすという意味合いで使われます。
つまり考えてわかるものではなく、アイデア出しをするのでもなく
見つけ出すものなのです。
インサイトが腹に落ちないのはなぜか?
インサイトが腹に落ちない原因のひとつが
ひとりでは実感しにくいということがあるのではと、私は考えています。
日本語に”気づき”という便利なことばがあります。
『何か大事そう』
『何かヒット商品につながるかも』
そういった気づきは、
少し慣れれば、たくさん起こるはずです。
またインサイトと似たようなものにアイデアがあります。
企業の中には新商品開発、新規事業の創出をアイデア出しのみに
頼っている例もみられます。
アイデアとインサイトはどう違うのでしょうか?
アイデアとは「既存のものと既存のものの新しい組み合わせ」と言われます。
個人の経験によるところが非常に大きいのです。
経験の幅が狭いとアイデアが出にくいということです。
日常生活の振り幅とでも言いましょうか。
また往々にして自分が最初に出したアイデアに執着しがちです。
これに対してインサイトは多くの場合、生活者またはユーザー、顧客から得ます。
つまり「自分発のアイデア」と「他者発のインサイト」というように対比することができます。
さて閑話休題
気づきとインサイトです。
生活者あるいは顧客から何等かの気づきを得る。
それがインサイトと呼べるものなのかどうか…
チームでのワークショップやディスカッションなくしては
「おーやった!インサイト発見したぞ!」
とはならないのです。
インサイトを発見することと、フラットなチームを形成すること
インサイトを発見するためには、チームが重要だということです。
上意下達式の昭和時代のチームではなく、
フラットなチームであることも大切。
最も望ましいのは、顧客特にヘビーユーザーの観察やインタビューと
結果を受けてのフラットなチームでのワークショップです。
そしてリーダーは、あくまでもファシリテーターとしてチームを導きます。
フラットなチームは、別の表現をするならば、全員が生活者としての自分を
思い出している状態と言えます。
会議室での”あるある”は、売る側の視点に立ち過ぎて
上から目線で「ターゲットは○○だから」(ひどい場合「馬鹿だから」とか)
「ウチの商品は△△で差別化できているから」など
独特の表現によって、自分がなんだか偉くなったような気になることです。
自分が生活者として立つということは、自分の財布からリアルにお金が出ていくところを
イメージできていること。
全員が生活者として立っていれば、ワークショップの間は上下関係が棚上げされた状態です。
顧客へのインタビューでは意見を聞かないこと
よく”顧客の意見を聞く”ということが言われますが
意見を聞くのは、実はよろしくないのです。
意見はノンユーザーにでも言えますし、無責任なものです。
意見と購買行動は決して一致しません。
例えば、「パッケージデザインが地味ですね。もっと明るい色だったら買うと思います」
こんな意見が出たとします。
真に受けて、パッケージデザインを赤やピンクにしたとして、
はたして売上は上がるのでしょうか?
意見を言ったヒトは実際に、倍の数量を購入してくれるのでしょうか?
残念ながら望んだ結果は起こりえません。
愛ある観察が重要になってきます。
観察は退屈な場合もあるかもしれませんが、
気づきを得るには重要な手段です。
例えばシャープの左右開き冷蔵庫。
許可を得て、生活者のキッチンにカメラをつけさせてもらい
担当者がカメラに録画された動画をじっくり見たことから
ヒット商品が生まれました。日本のキッチンは狭い場合が多く
横歩きをして(いわゆるカニ歩き)
身体をひねるように冷蔵庫の扉を開けている姿がビデオに映っていたのです。
「ああそうか!冷蔵庫の扉が左から開けばいいんだ!」
そして開発されたのが左右開き冷蔵庫です。現在では常識となっています。
インタビューの場合もご意見を聞くのではなく
観察と同じようなスタンスで顧客と向き合うことがとても大事です。
今どうしているか、どういう使い方をしているかといった日常的な行動
使用法など現実をしっかりと把握すること。
そして動作、行動をしているときの気持ち、感情をとらえること。
もしブランドイメージも関係するような開発テーマであれば、
ブランドについてのイメージを
解き明かしていくといった丁寧なインタビューが求められます。
松本 朋子 Tomoko Matsumoto
株式会社マーケティング・ハピネス 代表取締役
マーケティング&ブランディング コンサルタント